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最高裁判所第一小法廷 昭和41年(オ)660号 判決 1966年12月01日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由一について。

上告人が本件賃料を支払わなかつたのは、被上告人先代の死亡の事実を上告人が知らず、賃料債権者が被上告人となつたことの通知も受けなかつたからであるとの所論は、原審で主張、判断のない事柄である。それ故、論旨は適法な上告理由とは認められない。

同二ないし四について。

所論は原審が適法にした事実認定を非難し、または原審の認定に副わない事実を主張し、これを前提として原判決を非難するものであり、採るを得ない。

同五、六について。

原審の確定したところによれば、本件未払賃料の催告は昭和二六年二月二〇日発信され、その頃到達の書留郵便をもつてなされ、右催告の趣旨不履行による本件賃貸借契約解除の意思表示は、原判示のような事情の下において、昭和四〇年二月一二日到達の書面でなされたというのであり、右原審の判示は、挙示の証拠に照らし是認し得るところである。しからば、かかる事実関係の下においては、たとい、被上告人の側にも賃貸人としての権利の行使にいささか手ぬるい点がなかつたとはいえないとしても、上告人側に、さきに発生した解除権はもはや行使されることがないものと信ずべき正当な事由が生じたとはいえないから、右解除権が本件解除の意思表示のときまでなお有効に存続していたものと解すべきであるとした原判決の判断は、是認できる。また、原判決は、右催告においてその後のすべての延滞賃料に対する催告がなされたとは判示していないことは判文上明らかである。それ故、所論は、原審の適法にした認定判断を非難し、または原判示に副わない主張を前提とし、原判決の違法をいうものであつて、採るを得ない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田 誠 裁判官 大隅健一郎)

《当事者》

上告人 小林東二

被上告人 清水正之

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